旅人「こんにちは」
魔王「まおー」
旅人「こんばんは、ですかね」
魔王「まおー」
旅人「おつきさまが綺麗ですね」
魔王「うん」
旅人「私はあそこに飛びたいのです」
魔王「つれてってー」
旅人「二人だと心強いです」
魔王「おー」
旅人「さてさて準備をしましょう」
魔王「りょーかい」
旅人「月という所では時間が無いそうです」
魔王「ほー」
旅人「どっちの時計がいいでしょうか」
魔王「ゆっくりすすむほーがいいー」
旅人「私はあまり賢くありませんのでどちらかは分かりません」
魔王「わーうわーう!」
旅人「大きい方がきっとゆっくり進むでしょう」
魔王「まおー」
旅人「あなたは何を持っていきますか」
魔王「みんなー」
旅人「お優しいですね」
魔王「まおー」
旅人「私は望遠鏡も持って行きますよ」
魔王「なんでー」
旅人「恋人を探すのです」
魔王「まおー」
旅人「友人も探すのです」
魔王「ひとりはこわい」
旅人「今は二人ですので」
魔王「そっかー」
旅人「向こうは食べ物ありますかね」
魔王「きっと、こんぺいと」
旅人「コーヒーも用意しておきますか」
魔王「みるくもー」
旅人「どうぞ帽子です」
魔王「まおー?」
旅人「その角は向こうの人が怖がるかもしれません」
魔王「そっかー、あーとー」
旅人「ハンカチです」
魔王「あーとー」
旅人「使うことのありませぬように」
魔王「まおー」
旅人「これも」
魔王「なにー」
旅人「ラジオです」
魔王「くろいのこわい」
旅人「あなたの服も黒ですよ」
魔王「じぶんもこわい」
旅人「どうぞ白ですよ」
魔王「わーうわーう!」
旅人「ラジオも白く塗りましたよ」
魔王「まおー」
旅人「一緒に聴けますね」
魔王「わーうわーう!」
旅人「あ、」
魔王「んー?」
旅人「朝になっちゃいました」
魔王「まおー」
旅人「朝ご飯にしますか」
魔王「うん」
旅人「何にしましょう」
魔王「ゆめ」
旅人「どんな夢が美味しいのですか」
魔王「とおいのー」
旅人「全ては叶わないので一つさし上げましょう」
魔王「まおー」
旅人「美味しいですか?」
魔王「うん」
旅人「ほっぺについてますよ」
魔王「あーとー」
旅人「優柔不断なので、悲しみは無いです」
魔王「まおー」
旅人「ここに喜びが生まれました」
魔王「わーうわーう!」
旅人「そうだ、ラジオを聴きましょう」
魔王「うん」
旅人「わーうわーう!」
魔王「わーうわーう!」
旅人「…あれ、おかしいな」
魔王「なんでだろー」
旅人「どの局も繋がらないです」
魔王「ざんねん」
旅人「空気が穴だらけで寂しいですね」
魔王「まおー」
旅人「音で埋めたかったなぁ」
魔王「む・・・」
旅人「コンパスコンパス」
魔王「まおー?」
旅人「まわってますね」
魔王「くるくるー」
旅人「歩いてみますか」
魔王「さんせー」
旅人「足元に気をつけて」
魔王「いたたた」
旅人「お花です」
魔王「きれー」
旅人「私も花に生まれたかったなぁ」
魔王「もったいないよー」
旅人「雨…」
魔王「!」
旅人「ここは私が守ります、下がって」
魔王「まおー」
旅人「彼らも本気で落ちてくるので」
魔王「・・・?」
旅人「私も本気で接するべきだと思うのです」
魔王「わーうわーう!」
旅人「やみました」
魔王「おつかれさまー」
旅人「彼らのおかげで草花が潤いました」
魔王「ここによろこびがうまれました!」
旅人「私が花なら育つのでしょうが・・・」
魔王「ふぃ」
旅人「実に惜しいですね」
魔王「いろいろあるの」
旅人「タオルタオル・・・白にしましょう」
魔王「いいよねーしろー」
旅人「あなたもどうぞ」
魔王「わーうわーう!」
旅人「本、読みますか」
魔王「うん!」
旅人「難しいかもしれません」
魔王「じはめがねにならったよー」
旅人「どうです」
魔王「わっかんない!」
旅人「読みましょうか?」
魔王「おことばにあまえて」
旅人「『キートは老衰しきった体をよろめかせながら、足元の』」
魔王「ねむいー」
旅人「おひるねにしますか」
魔王「すーすー」
旅人「おやすみなさい」
魔王「すーすー」
旅人「私はいつもこう無防備だったのですね・・・」
魔王「すーすー」
旅人「おはようございます」
魔王「おはよ」
旅人「リボン似合ってますよ」
魔王「!、あーとー」
旅人「夜ですね」
魔王「うん」
旅人「こんばんは」
魔王「こんばんわ」
旅人「おつきさま、綺麗ですね」
魔王「きょうこそいこうねー、つき」
旅人「月へですか?あはは、無理ですよ」
魔王「まおー?」
旅人「行くとしても、空気の層が邪魔するそうです」
魔王「どーしたの?」
旅人「?」
魔王「かがやいてためはどこ?」
旅人「・・・?」
魔王「にせもの!にせものなんでしょ!」
旅人「ど、どうしたのですか!」
魔王「おやすみちゅうにどこにやったの!」
旅人「私は私ですよ、落ち着いてください」
魔王「つきにいくのゆめだったんでしょ!」
旅人「ゆめ・・・?」
魔王「・・・!」
旅人「ど・・・どうしたのですか」
魔王「・・・ごめんなさい」
旅人「こちらこそ、何故か怒らせちゃって」
魔王「・・・」
白い魔王はハンカチで涙をぬぐいました。
一番尊い夢を食したことを悔やみながら。
旅人は魔王を慰めるためにオカリナを吹きました。
『私は人の心を癒すことの出来る演奏家になりたいのです』
白い魔王は声が出なかったので、満面の笑みで旅人に答えました。
最終更新:2008年04月24日 17:36