以下は、http://human7.2ch.net/test/read.cgi/ms/1189409329/から引用
- 186 :可愛い奥様 2007/09/13(木) 18:31:51 ID:utkdXsNR0
- 奥様の笑い方は「おほほほ」
金満オヤジは「がははは」
ドジで頑張り屋のヒロインは「てへっ」
イジワルなライバルは「くすっ」
ヒロインを見守るテニス部のキャプテンは「あははは」
アケミはタバコの煙と共に「ふっ」
- 187 :可愛い奥様 2007/09/13(木) 18:43:51 ID:utkdXsNR0
- 金満オヤジの朝食はお手伝いの田中さん(仮名)が朝4時から用意した和食
ドジ(ry)なヒロインは牛乳を飲んで走りながら口にくわえたトースト
イジワルなライバルはクロワッサンとミルクティー、目玉焼きにサラダ
テニス部のキャプテンはオニギリ持参で朝練
アケミの朝食は水か迎え酒
- 190 :可愛い奥様 2007/09/13(木) 19:25:23 ID:pfbAEDxF0
- お金持ちの娘は天蓋付きのフリフリレース飾りベッド
ドジなヒロインはカントリー風ベッド(手作りクッション搭載)
アケミは万年床。
- 196 :可愛い奥様 2007/09/13(木) 20:47:54 ID:utkdXsNR0
- >190
その万年床に、店で酔いつぶれた男子学生が入ってる
彼は完全に記憶が飛んでいて、翌朝アケミが
「あら・・・昨日のこと憶えてないの?」
などと言ってからかうと状況を誤解、赤面して異様にうろたえる
意外な反応にアケミは思わず
「いい気になるんじゃねぇ」
と蹴り倒してしまい、男子学生はそれ以来アケミの子分
- 202 :可愛い奥様 2007/09/13(木) 21:08:01 ID:pfbAEDxF0
アケミの友達・キャバレー同僚の夕子。
お互い東北の寒村の出身。
夕子はアル中家庭で育った元被虐待児。
家庭に嫌気がさして家出して上野へ。
アケミと「いつか二人で店を出そうか」などといつも話している。
が、男に逃げられ睡眠薬&ガス自殺。
「馬鹿馬鹿!男なんかのために、なんでアンタが死ななきゃなんないのよ!」
アケミ号泣。
- 207 :可愛い奥様 2007/09/13(木) 23:53:05 ID:u/wNybR50
偶然店の客になった男と恋に落ちるアケミ。
二人は将来を誓うが、資産家の跡取りの息子である男は両親の大反対に合う。
更に男には男の父が経営する会社の合併先の会長の孫娘でもある美しい許婚の存在が。
資産も地位も全て捨ててアケミと駆け落ちを決意した男だったが、
決行の日、婚約者が自殺を図り、病院に駆けつける。
駅で一人男を待つアケミ。
時間は無常に過ぎ、雨まで降ってくる。
許婚者は一命を取り留めるも、体に不自由が残る。
アケミを愛する気持ちは変わらないが、責任を感じた男は婚約者との結婚を決意。
アケミに土下座して手切れ金として店一軒の権利書を差し出すがそれをアケミは破り捨てる。
男と婚約者が協会で式を挙げる日、朝起きたアケミは不調を感じ洗面所に駆け込む。
「まさか、これって…」鏡の中の自分を見つめながら呆然と立ち尽くすアケミ。
- 208 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 01:13:29 ID:9Asxkohi0
アケミは妊娠していた。キャバレーで客の相手をしながらも
頭の中は真っ白。苦悩するアケミ。
「やっぱり生めない」。
そう決意し、病院に手術の予約を入れる。
手術当日、病院へ向かうアケミは、道にへたりこむ妊婦を発見する。
驚いて声を掛けると「きゅ、急に陣痛が……まだ予定日前なのに…ウウッ」
と苦しむ妊婦。その瞬間、妊婦に破水が起こる。
- 209 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 01:21:17 ID:9Asxkohi0
- =====;;アケミ劇場;;=====
アケミは大声で人に助けを求め、救急車を呼んでもらう。
「すぐ病院に連れて行ってもらうから。安心して」と妊婦を励ます。
到着した救急隊員に、妊婦の身内と間違われ、救急車に同乗させられるアケミ。
救急病院の廊下で待たされると、突然、赤ん坊の産声が。
「あぁ生まれた」産声に感動し、涙が出てとまらない。
「あたし、一人だけど、一人だけど生むわ」そう決意するアケミであった。
- 210 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 01:32:41 ID:9Asxkohi0
アケミはキャバレーの支配人に、妊娠を告白する。
そして、お腹が目立たないうちは働かせてほしいと正直に願い出る。
「わかったよ、アケミちゃん。だけど酒はあまり飲んじゃ駄目だよ」。
いつもは売り上げにウルサイ支配人だが、夜の世界の人間はこんなとき
優しいのである。
苦しいツワリに耐えて働くアケミ。少し痩せてお腹はあまり目立たず、
思ったより長く働ける。
やがてアケミは玉のような可愛い男の子を出産。
- 211 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 02:04:47 ID:KLM4TytaO
赤ん坊を夜間託児所に預けて、アケミは産後2ヶ月でキャバレーに復帰する。
昼間一人で慣れない育児、店では乳が張り、肉体的には苦しいばかりだが、
それでも幸せを感じるアケミであった。
一月後…。アケミの部屋にかつて結婚を誓った男が現れた。
「いまさら何の用なのよ?」玄関先で冷たくあしらうアケミ。
「アケミ……いやアケミさん。お願いがあるんだ。その子を僕にくれないか?」男は唐突に話出した。
男の妻は、かつての自殺未遂の影響で、子どもができなくなっていたのだ。
- 212 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 02:06:15 ID:3a4yhCnu0
- =====;;アケミ劇場;;=====
生活の為、店に復帰するアケミ。
しかし新生児を抱えての夜の勤務は辛すぎた。
だんだんとやつれてきたアケミ。
仕事も休みがちになり、生活に困窮の色が見え始めた。
一方、アケミに未練を残した御曹司はアケミを時々物陰から眺めていた。
出産を知った彼はアケミのアパートを訪れる。
「帰って! この子は私一人の子です!」
しかし疲労で乳の出が悪いアケミの子は泣き声にも元気が無い。
畳み掛けるように御曹司から衝撃の告白が…。
自殺の後遺症のせいで彼の妻は子供が出来ない体になっていたのだ。
「頼む、その子を引き取らせてくれないか。
そんなにボロボロな体のままでは君と子供が共倒れになってしまう。」
御曹司はアケミに頭を下げる。
「私よりこの人の元で育った方がこの子の為にもいいのかしら…」
アケミの心は揺らぎ始めた。
- 214 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 02:19:07 ID:KLM4TytaO
- >>213
まさにステレオタイプな展開(・∀・)!
アケミのこれからどうなるの〜www
- 215 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 08:38:47 ID:9Asxkohi0
身を切られる思いで、アケミは御曹司に子どもを渡す決心をする。
その前日、アケミは子どもを連れて写真館へ行く。
「せめてもの思い出に、きちんとした写真を撮っておこう」
子どもを抱いた写真だけが、アケミの手元に残った。
- 216 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 09:05:25 ID:9Asxkohi0
何もかも奪われたアケミ。
ツライ思いを忘れようと、キャバレーでがむしゃらに働く。
そんなアケミを見守る、馴染み客A。
地元零細企業の社長で妻子持ちだが、アケミのことを幼い頃亡くした
妹のように思っていた。
がむしゃらに働き過ぎて、酒で体をこわすアケミ。
支配人から入院先を聞いて、見舞いにくるA。
「アケミちゃん、キャバレー辞めないか?空き店舗紹介するから」。
退院後、Aの紹介でアケミは小さな空き店舗を借りる。
「もう水商売はイヤだ。お天道様の見える時間に働こう」。
自分一人でできる商売。アケミは鯛焼き屋を始めることにした。
夏はカキ氷も売り、アケミの小さな店は、近所の住人・学生に
支えられて何とか暮らしていけるようになる。
それから10数年
- 217 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 09:18:38 ID:KLM4TytaO
夕方、男子高校生のグループが鯛焼きを買いに来た。
初めて見る男の子達である。
「ここの鯛焼き美味いって、先輩達言ってたよな」等と話している。
その中に、なぜか懐かしい顔立ちの高校生がいた。
- 218 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 11:52:23 ID:KVjn+1s00
- なんかアケミ劇場、楽しみになってしまっている!w
まんま昼ドラじゃん
- 219 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 12:19:49 ID:088wfV4i0
- まとめwiki更新もうちょっとまっててね
しかしな〜
やっぱり、アケミの像ってステレオタイプなんだわね〜
3分でほとんど同じ内容がかぶるなんて。
昼メロ2クール分くらい伸びるといいな〜ww
- 221 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 12:39:12 ID:3oXW5uZx0
- =====;;アケミ劇場(番外編);;=====
アケミの住む部屋
木造モルタルアパート2階部分。4畳半のDKに6畳の次の間。
DKには2人がけのテーブル。2口コンロのガステーブルの上にはアルミのなべで
煮物が。意外と小奇麗にしているが貧しさは伺い知れる。6畳の間には和室でありながら
白いローチェストと半間ほどのクローゼット(通販でそれぞれ1万円)。
ちゃぶ台の上にはギンガムチェックのクロスにわざわざ陶器の蓋付き容器に入れた
キャンディーが。その傍らにはYSLのタンブラー。
壁には二人で行った上高地のペナント。ローチェストの上では上高地で買ってもらった
水のみ鳥が悲しげにアケミを見つめている。
- 227 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 14:05:35 ID:3a4yhCnu0
- =====;;アケミ劇場(96〜196の間);;=====
重大な事実を知った!とほくそ笑むユミは兄であるアケミの夫にそれを伝えるも、
それを承知で結婚したアケミ夫に逆に怒られ、その話題は二度と持ち出すなと言われてしまう。
怒りと嫉妬でおかしくなったユミは深夜アケミ夫の夜勤中にアケミと子供達の眠る家に火を…
煙に巻き込まれるアケミと子供達。
119番の通報を受ける消防隊。
「現場住所は○○町3―○△×」
アケミ夫「それは家の住所だ!」
アケミ夫を含む消防隊が現場に到着。
夫は水をかぶって突入。
子供を無事救出、アケミも、というとき焼け崩れた梁が崩落、夫は脚を挟まれてしまう。
「お前だけは生きろ!」夫と共に焼死する覚悟だったアケミだが、夫の説得で一人外を目指す。
炎の中からアケミの姿がよろめき現れたそのとき、後ろで火に包まれた家がゆっくりと倒壊した。
「兄さん、あたしそんなつもりじゃ…
大好きな兄さんをあの売女から取り戻したかっただけなのに…
あははは、あは、あーはっはっはっは!」
精神の崩壊したユミの笑い声が火の粉とともに空に舞う。
ユミは精神病院へ強制入院となった。
夫と家、収入をなくしたアケミは子供二人を抱えて途方にくれる。
新聞を見た昔の店のオーナーからの申し出で東京に戻れば勤め先は確保できるが、
子供の面倒はどうすれば?
夫の親からのたっての申し出で、アケミは子供を残を夫の親に任せて東京に出稼ぎすることになった。
久しぶりの夜の世界。
悲しみ紛らわすためある意味水を得た魚のようにきびきびと働く明美だった。
- 228 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 14:06:31 ID:3a4yhCnu0
- ↑夫妹名マリに訂正
- 229 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 14:34:44 ID:K5rb18Hx0
- 番外編のペナントと水のみ鳥が最高だw
本編濃いですね、続きが楽しみ〜wktk
- 230 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 15:34:22 ID:9Asxkohi0
- >>217の続き
なぜか懐かしさを感じさせる顔立ちの男子高校生。
「フッ、まさかね」と、ため息をつくアケミ。
高校生のグループは、陸上部の1年生らしいことが会話から察せられた。
食べ盛りなのだろう、以来、アケミの店に頻繁に立ち寄るようになった。
半年ほど経っただろうか。
いつものグループに、あの顔立ちの高校生がいない日があるようになった。
アケミは何気なく、「最近お友達お休み?」とグループの
男子に話しかけた。
話掛けられた男子は「あぁ、二階堂ね。あいつ、最近お袋さんの
具合が悪いらしいんだ。授業が終わったらすぐ病院に行ってるよ」。
二階堂!!それは紛れも無く、昔結婚を誓った御曹司の苗字だった。
- 231 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 15:52:06 ID:9Asxkohi0
- >>230 続き
動揺するアケミ。うわずる声で、「そ、そうなの?あの男の子は
なんてお名前なのかしら?」と続けざまに話掛けた。
グループの男子は「あいつの名前はシンイチ。家は○○だよ」と
何の疑問も無く、幼さの残る顔で元気よく答えた。
シンイチ!!間違いない!あの子は私のシンイチだ!
半年も顔を見ていたのに気づかなかったなんて…。
この10数年、何もかも忘れようと必死で働いて生きてきた。
女の独り身を、世間から小馬鹿にされたこともある。
それでも鯛焼きさえ美味しく焼いていれば、何とかやっていける
そう信じて、それだけを頼りやってきたのだ。
その鯛焼きが、シンイチを呼び寄せたのだろうか。
アケミは運命の不思議さと脅威に驚愕した。
封印していた思い出が一気に押し寄せ、動悸が激しくなるのを感じた。
- 232 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 16:12:16 ID:9Asxkohi0
- >>321続き
東都病院の病棟。
窓際のベッドに御曹司の妻・二階堂サユリは横たわっていた。
「お母さん、具合どう?」学校からそのまま見舞いに来たシンイチが
声を掛ける。
「ありがとう。今日は随分気分がいいのよ」と微笑むサユリ。
「お母さんのことはいいから、シンイチは部活頑張って」サユリは
母親らしい気遣いをみせた。
しかし、部活に専念できない状態のことをシンイチは知っていた。
サユリの病気は重く、いつ何が起きるか分からないからだ。
- 233 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 16:22:52 ID:Q9HfzPtc0
母の前では精一杯の明るい笑顔で振る舞うシンイチ
面会時間の終わりを告げるナースに促され病室を後にする
「また明日も来るよ、母さんの好きな鯛焼き持ってさ
学校の帰り道に美味しい鯛焼き屋があるんだ」
「あらあら、母さんが食べたいんじゃなくて、シンイチが食べたいんじゃないの?クスクス
でも嬉しいわ、お母さんしっぽの方が好き、頭の方はシンイチにあげるわね」
やつれて青くなった母の頬に少し赤みが差しているのを見て、ホッとするシンイチ
(場面転換)病院の駐車場横
自転車の前かごに学生鞄を乗せ、走り出そうとしたシンイチ
しかし駐車場の一角止められたベンツに気づく
ベンツの横には父と、叔母のスミコがいた
声をかけようと近寄るシンイチの耳に衝撃的な言葉が飛び込んだ
「本当に、実の親子じゃないのにシンイチは優しい子ねぇ・・・・
あの二人が仲良く語り合ってるのを見て私は不憫で不憫で・・・・」
「よさないか姉さん、シンイチはサユリのことを実の親だと思ってる
本当のことは教えてないんだ」
シンイチの手から自転車のハンドルが離れる
ガシャーンという大きな音でハッと振り返る父とスミコ
- 234 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 16:26:02 ID:9Asxkohi0
- =====;;アケミ劇場;;=====
>>232続き
半月後、サユリの病状はさらに悪化する。
意識の混濁する日々が続いた。
サユリの夫・シンタロウは毎日病室に詰めている。
ふと、サユリの意識が戻った。
「あなた、私、もう長くないわ。もう少しでお別れだわ」声を
振り絞るサユリ。
「何を言ってるんだ。まだまだこれからじゃないか。気の弱いことを
言うな」励ますシンタロウの声をさえぎって
「あなた……あなたごめんなさい。あなたがアケミさんを忘れていない
こと、私ずっと知っていたの。でも自分の幸せを壊すのが怖かった。
私を見ていなくてもいい。あなたを離したくなかった…。
アケミさんから、シンイチまで取り上げた罰が当たったのね…」サユリは
か細い声で話し続けた。
- 236 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 17:20:38 ID:KLM4TytaO
サユリが実母で無い事を知り、激しいショックを受けるシンイチ。
同時に「僕の本当の母さんは?」「なぜ父さんは隠してたんだ?」
シンイチの頭の中を疑問がグルグルと駆け巡る。
しかし、サユリに対する母への愛は変わらなかった。
サユリは弱い体でずっとシンイチを育ててくれたのだ。
サユリの前では、何も知らないふりをしようとシンイチは決める。
それは、サユリと過ごす時間がもう少ない事を知っている、10代の少年ができる精一杯の選択だった。
- 237 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 17:30:47 ID:+69JBEL00
- 決心したものの、やはり隠されていたことには納得できないシンイチ。
足はそのまま、いつもの通いなれた道を辿り、気がついたときには
鯛焼きのにおい漂う、あの店の前についていた。
ふらふらとみせに吸い込まれるシンイチ
「いらっしゃい!・・・あっ・・・。」
何時もとは明らかに様子の違う市に地に何かを感じるアケミ。
「・・はい、ごぶさただね〜今日はなんにする?」
気がかりなことなど、何もない様子を装い、やけに明るく接するアケミ
「・・・」
「・・・・・・おかあさん、具合悪いんだって?
お友達に聞いたよ。。」
うつむいたままのシンイチ。
「・・・お母さんは・・俺・・・の・・・お母さんが・・・。」
「あたしには難しいことわかんないけどさ、あんたの大事なお母さんなんだろ?
・・・・・大事にしておあげよ。ほら、鯛焼き、今日はおまけだよっ
持ってきな。」
はっ!と、顔を上げるシンイチ。明るい顔で鯛焼きを受け取る。
「そうだ・・・そうだよっ、お母さんなんだよな・・。ありがとう!
おばちゃん!」
鯛焼きをもって駆け出すシンイチ
「ありがとう、おばちゃん・・・・か・・・・。」寂しく笑うアケミ
- 238 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 17:37:12 ID:Q9HfzPtc0
シンイチのことを考えて夜もろくに眠れなくなったアケミ
しかしお客に暗い顔を見せまいと明るい笑顔で接客する
夕方になり、学校帰りの学生達の客足も途絶えた頃、店先にシンイチが現れた
ハッと笑顔がこわばるアケミ、しかし瞬間何気ない風を装いシンイチに声をかける
幸いシンイチは何か他のことに気を取られているのかアケミの変化には気づかない
「すみません鯛焼き2つください」
元気のない声のシンイチが気にかかり、アケミは思い切って声をかけた
「毎度!久しぶりだねぇ、どうしたの?元気ないけど・・・お母さんの具合が悪いのかい?」
「えっ!何でおばさんが母さんのこと・・・・」
「あっ、ごっご免よ・・・・いえねお友達が心配してたからさ・・・最近姿見得ないしどうしたのかなって・・・
おばさん余計なこと言っちゃったね、ご免ねぇがさつ者だからさ、気を悪くしないでおくれ・・・・」
平謝りに謝るアケミの姿にシンイチはフッと笑顔を見せる
「そんな、気にしないで下さい、そんな風に気にかけてもらってるなんて思ってなかったからちょっと驚いちゃって
ありがとうございます」
少しはにかんだ笑顔・・・・別れたあの人によく似てる・・・・胸がいっぱいになるアケミだった
- 239 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 17:55:19 ID:Q9HfzPtc0
やがてシンイチはポツリポツリと話し始めた
「母さん、もう結構危なくて・・・・・でも僕にはつらい顔を見せないように頑張ってくれるんです・・・・
体が弱かったのに、僕のことには一生懸命で、優しくて・・・・・」
笑顔で話していたシンイチの顔が曇った、そのまま押し黙ったシンイチをアケミは心配そうに見ている
「母さん・・・本当の母親じゃなかったんです・・・・僕今まで何も知らなくて昨日父さん達が話してるの聞いて・・・
今日母さんに会って、どういう顔すればいいのかわからないんです・・・・・」
涙を流しながら語るシンイチを見て、アケミは駆け寄って抱きしめたかった!頭を撫でて辛かったねと励ましたかった!
シンイチを産んだ時のこと、短かったシンイチとの暮らし、二階堂によって引き離された日のこと・・・
昔の出来事が走馬燈のようにアケミを襲った!フッと目眩がしたが、シンイチに悟られまいと、ぐっと足を踏みしめてアケミはこらえた
突然アケミは大声で笑い出した、アッハッハと豪快に笑った、目には涙が浮かんでいたが
呆気にとられたシンイチは気づかなかった
「なんだねぇこの子は!血のつながりがなんだっていうんだい?大事なお母さんなんだろう?
今まで優しく大事に育てられたんだろう?それでいいじゃないか、あんた達は親子だよ
どこへ出してもおかしくない立派な親子だ!あたしが保証するよ!」
バンバンと背中をどやされて、最初は呆然としていたシンイチの顔が徐々に明るさを取り戻した
「ほんとだ、僕・・・・何を悩んでたんだろう・・・母さんは母さんなんだよな、そうなんだ!」
輝く笑顔のシンイチを見てアケミも頷いた
「さっ早くお母さんのところへ行ってやんな!お母さんにはあんたの笑顔が何よりの薬だよ!」
「ありがとうおばさん!たいやき、母さんの好物なんだ、また買いに来るよ!」
自転車を走らせ、病院に向かうシンイチの背中を見つめながらアケミは深い深いため息をついた
「あんなに優しい子に育ててくれて・・・・・・サユリさん・・・・ありがとう・・・・・」
アケミはそっと病院の方角に手を合わせた
- 240 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 17:56:03 ID:Q9HfzPtc0
- >>237さん
かぶった、すみません
- 241 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 18:05:55 ID:FLpawcZK0
- 小百合って名前を聞くとホッとロードしかでてこない
「さゆりってぇーつらじゃないけど、でもさゆりなんだー」
みたいな台詞
- 242 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 18:11:14 ID:KLM4TytaO
- >>239
ホロリときちゃったジャマイカwww
- 243 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 19:16:48 ID:h0QUACAz0
- アケミの焼いたタイヤキが喰いたくなってきた…
- 244 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 19:36:19 ID:9Asxkohi0
晩秋。
枯れ葉散る肌寒い朝、サユリはシンタロウとシンイチに看取られて
息を引き取った。
最後の言葉は「ごめんなさい」だった。
慟哭するシンタロウとシンイチ。
サユリの最後の言葉が胸に突き刺さる。
結局、サユリのこともアケミのことも幸せにできなかったと
自分を責めるシンタロウ。
体が弱い中、一生懸命育ててくれたサユリを想うシンイチ。
それぞれが悲しい思いを抱える秋だった。
- 245 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 19:49:47 ID:9Asxkohi0
「今朝はやけに肌寒いわね。もう冬かしらね」。
そうつぶやいて、アケミは店の支度を始めた。
鯛焼き屋を始めて10数年。
酒や厚化粧とも縁が切れたアケミの肌は、年齢よりも少し若く見える。
いつもアケミを気に掛けてくれる零細企業の社長Aは
「アケミちゃんもすっかり鯛焼き屋のお姉さんだね」などとアケミを褒めた。
「あはは!お姉さんなんて、社長さんは相変わらずお世辞が上手だね。
もう私はオバちゃんだよ」、明るく返すアケミ。
それにしても今朝は寒い。半月ほど顔を見せないシンイチ。
何かあったのだろうか。不安を抱えるアケミであった。
- 246 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 20:17:57 ID:9Asxkohi0
サユリの葬儀が終わり、シンイチは登校した。
一生懸命シンイチを気遣う仲間の優しさが身に染みた。
「友達っていいな」心の中でつぶやくシンイチ。
サユリの死、生みの母の謎、10代の少年には重過ぎる試練でも、
仲間も顔を見るとホッとする。少し元気も出てくる。
ずっと休んでいた部活に行こう、そして帰りは鯛焼き屋に寄ろうと
シンイチは挫けそうな心を奮い立たせた。
- 247 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 21:11:59 ID:uAep5R3F0
- シンイチかわいいよシンイチ(´Д`;)
シンイチと一緒に公園のベンチでアケミ姐さんの鯛焼きを食べたい・・・
- 248 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 21:12:16 ID:3a4yhCnu0
- その頃、アケミの元には都会に憧れた子供達、
タカシとヨウコが亡き夫の親元から離れて上京してきた。
高校を卒業したタカシはやはり父親の血か、ミュージシャンに憧れ知り合った他の若者と共同生活をしながらバイトの傍らビジュアル系バンドでデビューを目指す。
妹のヨウコはファッションデザイナーを目指すもまずは定時制高校に通いながらアケミの店を手伝うことに。
店に来る客にも「ヨウコちゃん、ヨウコちゃん」と可愛がられ看板娘として人気者になる。
特に高校生客には真剣にヨウコに淡い気持ちを抱くものが少なくなかった。
久しぶりに家族と過ごすアケミに笑顔があふれる。
それにつけてももう一人の家族、決して一緒に暮らせないシンイチのことが気にかかるアケミ。
- 249 :248 2007/09/14(金) 21:13:45 ID:3a4yhCnu0
- ↑=====;;アケミ劇場;;===== でした、スマソ
- 250 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 21:37:22 ID:9Asxkohi0
陸上部の部室。
久しぶりにシンイチの顔を見て、安心する仲間達。
先輩達は不器用ながらもシンイチを労わった。
「シンイチ、今日の練習はハードに行くぞ!」、部長がはっぱを掛ける。
スパイクの感触を懐かしく感じながら、晩秋の冷たい風の中を
シンイチは走りに走った。悲しみを吹っ切るように。
- 251 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 21:49:47 ID:9Asxkohi0
夕暮れ。
その日は30分延長で練習が行われた。
仲間達は腹ペコだ。シンイチも、猛烈に空腹だった。
こんな空腹感は何ヶ月振りだろう。
この半年、何を食べても味を感じて無かった気がする。
あぁお腹が空いた。熱々の鯛焼きにかぶりつきたい。
- 252 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 22:00:21 ID:9Asxkohi0
「よし!今日は俺達の奢りだ!」3年生が宣言した。
3年生は、受験のために夏で引退なのだが、後輩を常に気に掛け、
体力維持を口実に時折練習に参加していた。
「わー!先輩!ありがとうございます!」、2年生の鈴木がおどけて
小躍りした。それを見て笑顔がこぼれる部員達。
3年生の心遣いにも、鈴木が盛り上げてくれる優しさにもシンイチは感動していた。
- 253 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 22:12:50 ID:9Asxkohi0
ワイワイガヤガヤ、賑やかに学校近くの商店街を歩き、陸上部員達は
アケミの店に到着した。
「オバサーン!鯛焼き全員5個づつお願い!」、部長が大声で注文した。
「まぁ!今日は陸上部全員集合なのね!」、ニッコリ笑いながらも
アケミの目は必死にシンイチを探していた。
「いた!」アケミは心の中で叫んだ。少し痩せただろうか、シンイチの
姿を見て、このしばらくの間に何があったのか心配するアケミだった。
- 254 :可愛い奥様 2007/09/14(金) 22:44:22 ID:9Asxkohi0
賑やかに鯛焼きを頬張る陸上部員達。シンイチも笑顔でかぶりついている。
突然、アケミの目から涙があふれだした。
驚く部員達。「オバサンどうしたの?どうしたの?」、鯛焼きを
くわえたままアケミに声を掛ける。
「オバサンね、皆があんまり美味しそうに食べてくれるから、
すごく嬉しくなっちゃって。鯛焼き焼いてて良かったなぁって…」
慌てて涙を拭いながら、笑顔で答えるアケミ。
「オバサンの鯛焼きは本当に美味しいよ!俺なんか踊り食いしちゃうよ!」
鈴木がクネクネしながら鯛焼きを食べてみせた。鈴木はいつでも朗らか
ムードメーカー。陸上部のお笑い担当だ。
「シンイチに、こんなに優しい仲間がいて良かった」そう思うと、
また目頭が熱くなるアケミであった。
- 263 :可愛い奥様 2007/09/15(土) 13:30:01 ID:ENrqEBgr0
「もうお母さんたら感激屋なんだから。みんなびっくりしちゃってるじゃないの」
追加の鯛焼きを運んでくる娘のヨウコ。
「おお、ヨウコちゃん!我が愛しのハニー!いつ結婚してくれるの?」
おどけて地面に方ひざをつき、プロポーズする鈴木に部員全員が爆笑する。
「ハイハイ、鈴木君たらいっつも冗談ばっかり」軽く受け流すヨウコ。
笑いながらもシンイチはヨウコの愛らしさから目が離せなくなっていた。
(こんな人前はいなかったよな?なんて可愛い子なんだ…)
残りの鯛焼きを味が分からないまま平らげたシンイチは帰り道で鈴木に尋ねる。
「鯛焼き屋の新しい子、あれ誰?」
「ああ、お前最近来てなかったもんな。あれはおばさんの娘さんでヨウコちゃん。
可愛いよな〜。なに、お前も気になっちゃたりして?」
「ばっか、何言ってんだよ?!」
鈴木にからかわれて真っ赤になるシンイチ。
その頃、アケミの息子タカシは苦しい生活の中で仲間と練習を重ね、
ついにバンドオーディション番組の出場権を手にした。
番組審査員に名を連ねるのは彼の実の父、あの大物ミュージシャン。
二人はお互いのことをまだ知らない…。
兄のためを思い、夜なべしてヴィジュアル系バンドの衣装を作るヨウコを手伝うアケミ。
「お母さん、私やっぱり洋服作るのって大好き…。早く定時制を卒業してデザイン学校に行きたいわ」
「そうね、お母さんも応援するわ」
(それにしても今日お店に来た人、かっこよかったわ…)
「ヨウコ、手が止まってるわよ?何をボーっとしてるの?」
「!な、なんでもないわ、お母さん」
顔を赤らめるヨウコ。