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「スイス式ハルバード」(2011/03/05 (土) 19:03:17) の最新版変更点
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*''スイス式ハルバード ~Switzerland Type Halbard~''
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|#image(swhal01-01.png,blank,left)|
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**基本スペックと定義
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|#image(swhal01-02.png,blank,left)|
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|全長|200~350cm|
|重量|2.5~3.5kg|
|地域|スイス|
|年代|15~19世紀|
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ハルバードとは、長柄武器の完成形の一つである。&br()
長柄武器は大きく分けると「突く」「斬る」「叩く」「引っ掛ける」というカテゴリ分けが出来る。&br()
ハルバードはこれら全てを1つの武器で可能にした長柄武器である。&br()
柄に取り付ける方法は二つあり、ひとつはスイス式両タイプのような柄舌(ランゲット)形式。&br()
もうひとつはソケット式で、後者は儀礼用に多く見られる。&br()
あらゆる状況に対応することが出来るように考慮して作られた、非常に洗練された武器と言える。&br()
&br()
このスイス式はそのハルバードの雛形であり、基本タイプである。&br()
一枚の金属プレート(鉄や鋼鉄)を加工して、槍の穂先、斧刃、鉤爪の形状を作り出している。&br()
(他の国のものや時代によっては、それぞれが別の板で作られたパーツで作られたかのようなものも多く見られる。)&br()
画像の下のタイプ(斧刃が平ぺったいもの)が最も初期のタイプであり、「ゼンパハ式」とも呼ばれる。&br()
(ゼンパハというのは、スイスのルツェルン州にあるゼンパハ湖のことであると思われる。)&br()
その後、スイスでハルバードという武器のベーシックな形状(画像上のタイプ)が作られたのである。&br()
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**部位別の呼称
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|#image(swhal01-03.png,blank,left)|
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|1|穂先:スピアーヘッド(SpearHeads)|
|2|刺先:スパイク(Spike)|
|3|斧刃:アックス・ブレード(Ax Blade)|
|4|錨爪or鉤爪:フルーク(Fluke)|
|5|柄舌:ランゲット(Langet)|
|6|柄:ポール(Pole)|
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**時代背景
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15世紀の後半にスイスで生まれたとされる武器だが、その元は13世紀に遡る。&br()
北欧の戦士が長柄に「[[スクラマサクス]]」をつけていた武器が元であり、スイスの兵士はこの即興武器を13世紀末まで使用していた。&br()
それに改良に改良を重ねられ、15世紀ごろにはフルーク=鉤爪がついたものが作られている。&br()
これが「[[ヴォウジェ]]」である。&br()
ヴォウジェは斧刃と一体化しているが、槍の穂先に近いものも見られており、この3機能をはっきり区別したのがハルバードである。&br()
フルークは頑強に作られ、引っ掛けることも叩くことも可能になり、穂先ははっきりと槍の形をすることで刺突力が増した。&br()
&br()
こうして、完成された武器であるハルバードを片手に、スイスの傭兵はヨーロッパ諸国で活躍することになる。&br()
もちろんその機能性に着目し、取り入れた国は多く、その国独自の進化を遂げていくことになるのである。&br()
スイス式もこの後、更にもう1つの派生を生むのだが、それはまた別の話である。&br()
&br()
元々は戦場最前線の武器だったが、「[[パイク]]」が登場してからは、パイク部隊を突破された先の中央の部隊に実装されることとなる。&br()
更に、19世紀末まではその洗練された形状に装飾を施され、儀礼用として長く使われた。&br()
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**使用用途
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ゼンパハ式&br()
|#image(swhal01-04.png,blank,left)|
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通常タイプ&br()
|#image(swhal01-05.png,blank,left)|
&br()
槍部分で「突く」、斧部分で「斬る」「払う」、鉤爪部分で「引っ掛ける」「叩く」。&br()
戦場におけるあらゆる状況においても対応できるように、戦場で使われながら進化してた武器ならではの用途の広さである。&br()
ただし、複合武器の宿命である「高い熟練度」は必須であり、使いこなすにはそれ相応の訓練が必要である。&br()
&br()
ハルバードは1対1の状況で使うと言うものではなく、あくまで多数対多数で使われるものである。&br()
軍隊の中で前線もしくは精鋭部隊等が使用する「戦争用」の武器なのである。&br()
仮にハルバードを使いこなせるようになったとしても、単独でハルバード片手に戦場で鬼神の如く活躍できるものではないのである。&br()
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**ハルバードは果たして「最強の武器」か?
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ハルバードはその形状から人気も高く、多機能と言うことも相まって、数ある近接武器で「最強」の呼び名が高い。&br()
では実際どうなのか?&br()
&br()
前述にもしたように、ハルバードは軍隊用に作られた「戦争用の武器」であり、「戦闘用の武器」ではない。&br()
戦争のような乱戦で、想定される様々な状況に対応できる、と言う意味では最高峰の武器である。&br()
戦争と言うシチュエーションにおいては、総合能力では「最強」の一角であることは間違いない。&br()
&br()
これが1対1や少人数での「戦闘」となると…確かに多機能であるので「強い」部類には入る。&br()
が、ハルバードの構造を考えると「最強」とは言い難くなる。&br()
ハルバードはその殆どが金属板をその形状になるよう「叩いたり切ったりして」加工したものである。&br()
そのため、全体的に強度が特別高いと言うものでもない。(現存するものも、板が折れ曲がっているものがよく見られる)&br()
また、1枚の金属板で多機能を実現させている反面、切れ味や刺突力はその分野に特化した武器には一歩劣るところがある。&br()
&br()
穂先は「[[アールシェピース]]」や「[[エストック]]」の貫通力には流石に勝てるようなものではない。&br()
斧刃は「[[バトルアックス]]」や「[[バルディッシュ]]」のような頑強さや切断力はない。&br()
鉤爪は「[[ウォー・ピック]]」や「[[ベク・ド・コルバン]]」程の特化した打撃力・引っ掛ける能力もない。&br()
&br()
つまり、戦闘においても総合能力は高いが、攻撃の各カテゴリ(貫通力や切断力)まで「最強」ではないということである。&br()
武器と言うものは色んな視点で「最強」を計る物差しがある。&br()
武器は使われる用途、状況、使用者、好み…色んな観点により、強さや使い勝手が変わるものである。&br()
よって、1つのものを「最強の武器」と決め付けることは不可能である、と筆者は結論付けておこうと思う。&br()
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2010年 6月14日更新&br()
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**参考文献
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***・文献
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|柏書房 ||図説 西洋甲冑武器事典 ||三浦権利 著|
|新紀元社 ||武器事典 ||市川定春 著|
|新紀元社 ||武器と防具 西洋編 ||市川定春 著|
|新紀元社 ||図解 近接武器 ||大波篤司 著|
|新紀元社 ||武器甲冑図鑑 ||市川定春 著|
|ダイヤグラム・グループ||武器―歴史、形、用法、威力||田島優 北村孝一 著|
|幻冬舎コミックス ||図説 武器だもの ||武器ドットコム 著|
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*''スイス式ハルバード ~Switzerland Type Halbard~''
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**基本スペックと定義
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|全長|200~350cm|
|重量|2.5~3.5kg|
|地域|スイス|
|年代|15~19世紀|
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ハルバードとは、長柄武器の完成形の一つである。&br()
長柄武器は大きく分けると「突く」「斬る」「叩く」「引っ掛ける」というカテゴリ分けが出来る。&br()
ハルバードはこれら全てを1つの武器で可能にした長柄武器である。&br()
柄に取り付ける方法は二つあり、ひとつはスイス式両タイプのような柄舌(ランゲット)形式。&br()
もうひとつはソケット式で、後者は儀礼用に多く見られる。&br()
あらゆる状況に対応することが出来るように考慮して作られた、非常に洗練された武器と言える。&br()
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このスイス式はそのハルバードの雛形であり、基本タイプである。&br()
一枚の金属プレート(鉄や鋼鉄)を加工して、槍の穂先、斧刃、鉤爪の形状を作り出している。&br()
(他の国のものや時代によっては、それぞれが別の板で作られたパーツで作られたかのようなものも多く見られる。)&br()
画像の下のタイプ(斧刃が平ぺったいもの)が最も初期のタイプであり、「ゼンパハ式」とも呼ばれる。&br()
(ゼンパハというのは、スイスのルツェルン州にあるゼンパハ湖のことであると思われる。)&br()
その後、スイスでハルバードという武器のベーシックな形状(画像上のタイプ)が作られたのである。&br()
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**部位別の呼称
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|1|穂先:スピアーヘッド(SpearHeads)|
|2|刺先:スパイク(Spike)|
|3|斧刃:アックス・ブレード(Ax Blade)|
|4|錨爪or鉤爪:フルーク(Fluke)|
|5|柄舌:ランゲット(Langet)|
|6|柄:ポール(Pole)|
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**時代背景
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15世紀の後半にスイスで生まれたとされる武器だが、その元は13世紀に遡る。&br()
北欧の戦士が長柄に「[[スクラマサクス]]」をつけていた武器が元であり、スイスの兵士はこの即興武器を13世紀末まで使用していた。&br()
それに改良に改良を重ねられ、15世紀ごろにはフルーク=鉤爪がついたものが作られている。&br()
これが「[[ヴォウジェ]]」である。&br()
ヴォウジェは斧刃と一体化しているが、槍の穂先に近いものも見られており、この3機能をはっきり区別したのがハルバードである。&br()
フルークは頑強に作られ、引っ掛けることも叩くことも可能になり、穂先ははっきりと槍の形をすることで刺突力が増した。&br()
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こうして、完成された武器であるハルバードを片手に、スイスの傭兵はヨーロッパ諸国で活躍することになる。&br()
もちろんその機能性に着目し、取り入れた国は多く、その国独自の進化を遂げていくことになるのである。&br()
スイス式もこの後、更にもう1つの派生を生むのだが、それはまた別の話である。&br()
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元々は戦場最前線の武器だったが、「[[パイク]]」が登場してからは、パイク部隊を突破された先の中央の部隊に実装されることとなる。&br()
更に、19世紀末まではその洗練された形状に装飾を施され、儀礼用として長く使われた。&br()
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**使用用途
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ゼンパハ式&br()
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通常タイプ&br()
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槍部分で「突く」、斧部分で「斬る」「払う」、鉤爪部分で「引っ掛ける」「叩く」。&br()
戦場におけるあらゆる状況においても対応できるように、戦場で使われながら進化してた武器ならではの用途の広さである。&br()
ただし、複合武器の宿命である「高い熟練度」は必須であり、使いこなすにはそれ相応の訓練が必要である。&br()
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ハルバードは1対1の状況で使うと言うものではなく、あくまで多数対多数で使われるものである。&br()
軍隊の中で前線もしくは精鋭部隊等が使用する「戦争用」の武器なのである。&br()
仮にハルバードを使いこなせるようになったとしても、単独でハルバード片手に戦場で鬼神の如く活躍できるものではないのである。&br()
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**ハルバードは果たして「最強の武器」か?
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ハルバードはその形状から人気も高く、多機能と言うことも相まって、数ある近接武器で「最強」の呼び名が高い。&br()
では実際どうなのか?&br()
&br()
前述にもしたように、ハルバードは軍隊用に作られた「戦争用の武器」であり、「戦闘用の武器」ではない。&br()
戦争のような乱戦で、想定される様々な状況に対応できる、と言う意味では最高峰の武器である。&br()
戦争と言うシチュエーションにおいては、総合能力では「最強」の一角であることは間違いない。&br()
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これが1対1や少人数での「戦闘」となると…確かに多機能であるので「強い」部類には入る。&br()
が、ハルバードの構造を考えると「最強」とは言い難くなる。&br()
ハルバードはその殆どが金属板をその形状になるよう「叩いたり切ったりして」加工したものである。&br()
そのため、全体的に強度が特別高いと言うものでもない。(現存するものも、板が折れ曲がっているものがよく見られる)&br()
また、1枚の金属板で多機能を実現させている反面、切れ味や刺突力はその分野に特化した武器には一歩劣るところがある。&br()
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穂先は「[[アールシェピース]]」や「[[エストック]]」の貫通力には流石に勝てるようなものではない。&br()
斧刃は「[[バトルアックス]]」や「[[バルディッシュ]]」のような頑強さや切断力はない。&br()
鉤爪は「[[ウォー・ピック]]」や「[[ベク・ド・コルバン]]」程の特化した打撃力・引っ掛ける能力もない。&br()
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つまり、戦闘においても総合能力は高いが、攻撃の各カテゴリ(貫通力や切断力)まで「最強」ではないということである。&br()
武器と言うものは色んな視点で「最強」を計る物差しがある。&br()
武器は使われる用途、状況、使用者、好み…色んな観点により、強さや使い勝手が変わるものである。&br()
よって、1つのものを「最強の武器」と決め付けることは不可能である、と筆者は結論付けておこうと思う。&br()
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2010年 6月14日更新&br()
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**参考文献
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***・文献
|柏書房 ||図説 西洋甲冑武器事典 ||三浦権利 著|
|新紀元社 ||武器事典 ||市川定春 著|
|新紀元社 ||武器と防具 西洋編 ||市川定春 著|
|新紀元社 ||図解 近接武器 ||大波篤司 著|
|新紀元社 ||武器甲冑図鑑 ||市川定春 著|
|ダイヤグラム・グループ||武器―歴史、形、用法、威力||田島優 北村孝一 著|
|幻冬舎コミックス ||図説 武器だもの ||武器ドットコム 著|
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