無人島コロシアイツアー ◆gqWg4Jl/og



 ぱっ。
――はじまりは、そんなありふれた軽い効果音――サウンド・エフェクトだった。
暗く黒い、何も見えないくらいの暗黒の空間を、光が一瞬にして塗りつぶす。そこには、40、50……60人を超える数の生物が存在していた。
中には二足歩行で歩くカエルだったり、犬の顔をした小さい男だったり、虫の羽の生えたペンギンのような生き物だったりと、明らかに「人間」とカテゴライズするには、あまりにも不可能な者までいた。それが、この状況の異常さを物語っていた。
――しかしそれは、
あくまでここが何も起きないただの普通のくだらない現実の世界であれば、の話なのだけれど。

「起きてよ! このままじゃコロシアイが始められないでしょ!」

――部屋の壇上には、白と黒のコントラストが特徴的なクマが立っていた。片方は可愛らしい顔立ちをしているが、もう片方は悪魔を表すかのような邪悪な表情をしていた。
まるで人体模型をできる限り可愛くしましたよ、と作ったかのようだった。の割には悪趣味な造形のような気もするが。

「……仕方ないなぁ。じゃ、「目覚まし」でも鳴らしてあげましょう」

クマがそう言うと、唐突に「目覚まし」が鳴った。
目覚ましと言うにはあまりにも不釣り合いな、ボン、という爆音が。
その耳をつんざく不快な音で、ほぼ全員の者たちが目を覚ました。
ただ、一人――首を失った制服姿の少女を除けば、だが。

「なんだ……え?」
「うわあああっ! 人が死んでる!」
「殺人事件やー! ってゆーかここどこなんや!?」
「何だこれは……一体どうなっている……!?」
「ここどこだよ……どうなってんだこりゃ……」

目を覚ました人物たちは、すぐさまその首なし死体に目が行く。そのまま各々の反応を示しだす。
騒ぐ者、動揺する者、冷静な者、考察する者、その反応は多々に渡った。

「マミ……さん……どうし、て……?」

その中でも、ピンク色の髪をツインテールにした小柄な少女……おそらく中学生あたりだろうか。その少女が最も動揺していたものと見れた。
「マミさん」と呼ばれたそれが、この死体の人物だったのだろうか。

「はい、オマエラおはようございます。ボクの名前はモノクマ。
 一部の人は知ってると思うけど、希望ヶ峰学園っていう学園で学園長をしてます。よろしくね。
 今回は、この実験の説明係兼マスコット……ってとこだね」

モノクマ――と名乗った、そのクマは、間、髪入れず、説明に入った。

「オマエラ、なんでここに連れてこられたか、わからないようだから、単刀直入に言わせてもらうね。
 ……いまからオマエラには、コロシアイをしていただきます!」

コロシアイ――殺し合い。
それは、あまりにも非現実的で滑稽で、誰もが嘘が夢かと思ってしまうほどに唐突すぎる死刑宣告だった。

「は?」
「殺し方は問いません。殴殺撲殺斬殺銃殺焼殺圧殺刺殺絞殺毒殺扼殺薬殺感電殺謀殺呪殺……とにかく殺しあってください。反則もなし。どう? シンプルでしょ?」

シンプルだと言われても、その荒唐無稽な事を、受け入れられるはずがなかった。いや、一部、死や殺人を間近で見ているものもいたが。

「……」
「うぷぷぷ。びっくらこいちゃった?
 じゃあ説明していきましょう!」

モノクマの後ろに、黒板が出現した。子供のような字で書かれたそれを指差すと、白黒のクマは説明を始めた。

「オマエラがいるのは、こんな形の無人島です。ここでオマエラには殺し合ってもらいます。
 逃げるようなことがあれば即、オマエラの首につけられている首輪が爆発して死にます! でもそんなのツマラナイからやめてよね。
 お互い殺し合って、残り二人になったところでゲームは終わりです」

「!?」

――二人。
その言葉に一部の人間が動揺する。
こういうものは、一人しか生き残れないだとか、だいたいそういうものだと思っていたから。かもしれない。
理由はおそらくそれだけではないだろう。
大切な誰か、守りたい誰かと一緒に生き残れる可能性があるということ。しかし、それ以外の人間を切り捨てなければならない――やはりそれだけではモチベーションなんて上がらなかっただろう。

「もちろん手ぶらじゃオマエラも可哀想でしょ? だから優しい学園長がオマエラ全員にプレゼントしちゃいましょう!
 じゃじゃーん、デイパック~!」

某青色の猫型ロボットを彷彿させるかのようなダミ声で、モノクマは自分と同じツートンカラーのデイパックを取り出す。
チャックを開け、中身を出すと、色々なものを取り出した。

「この中には水と食糧、コンパスに、懐中電灯。あと戦うための武器が入ってます。
 武器の種類はみな同じものではありません。ナイフ、銃からはじまって爆弾や鈍器なんかも入っています。あ、中にはフォークやハリセンなんかのハズレもあるから注意してよね。
 運がいいと、魔法のアイテムが入ってたり……なんてこともあるかもね」

「魔法……」

魔法。
その言葉を聞いて赤髪の少年がわずかな反応を見せた。何か魔法と関わり合いでもあるのだろうか。
それ以外にも眼鏡をかけた黒髪の女性、黒髪の女子学生なども反応を見せたように感じられた。

「それと、その中でも一番重要なアイテムがこれだね」

モノクマはそう言うと、大型のタブレットを取り出した。

「これにはこの島の地図や参加者名簿が入ってるから、スタートしたら確認しておいてね。それとこれには、通話機能もあります」

通話機能という言葉を聞き、参加者が再び反応した。

「お互いの情報をこのタブレットに登録することで、通話や文章送信ができるんだ。協力してお互い生き残れるよう活用してね」

この機能のせいで、さらに殺し合いが加速する可能性が上がるということ。そのせいか、会場の空気はさらに張り詰めていた。

「それと、オマエラの中に、凄い力をもってるのがいるけど、その力は封じたから抵抗しようとしてもムダだからね。
 最後に禁止エリアと賞品についての発表だよ。
 禁止エリアってのは、6時間おきに放送で流す中間報告と同時に発表される規則のことだね。中間報告は死亡した参加者とこれが発表されることになってるの。
 細かいことは放送になったらわかるから省略するとして、発表後にエリアに入るとどうなるか、教えてあげるね。
 えー、オマエラがつけている首輪があるでしょ? それが爆発して死んじゃうんだ。ただそれだけ。だから絶対入らないでね。あ、無理やり外そうとしてもボンだからそれはやめてよね」

首輪が爆発。
死。
それはすなわち、首がない、少女の死体のようになるということだ。
その惨状を目撃している参加者は、それがどういうことか、すぐに理解した。
モノクマが指を鳴らすと、上から札束の山が降ってきた。
その数は一億円など目ではない数であった。

「生き残った参加者には賞金百億円と……ボクができる限りの好きな願いを一つだけ叶える権利が与えられます!」

賞金と願い。
あまりにも大きすぎる賞品。
しかし、人殺しの見返りとしてはそれは大きすぎる。
しかし、二人が生存可能。協力もでき、豪華すぎる賞品もある。これを呑んでしまう参加者もいるのではないかと、さらに会場の雰囲気は悪化の一途を辿っていた。

「じゃあ、さっそくはじめましょー! 殺し合い、スター……」

モノクマが、赤色の大きいスイッチを押そうとする。その時――

「……!」
「何のつもり? 黒神めだかさん。人吉善吉クン」

黒神めだかと呼ばれた黒髪の女性は、スイッチを押そうとしたモノクマに拳を入れていた。
その後ろでは、人吉善吉と呼ばれた金髪の青年がモノクマを取り押さえていた。

「ふざけるな! さっきから聞いておれば殺し合いなど……させてたまるか!」
「そんな事、許されるわけねえ! 首輪が爆発する前にてめえを倒す!」

めだかと善吉の激昂の言葉にモノクマはめんどくさそうな顔をする。

「はぁ、いるんだよね。こういう空気の読めない困った生徒がね。
 あまり参加者を減らすのはイヤなんだけどなぁ……っと!」

モノクマが短い足を伸ばし、めだかを蹴り飛ばす。めだかは壁に吹っ飛ばされ、壁は抉れた。

「ぐ……この力……貴様、人間では……」
「うるさいなあ」

ピピピ……
そんな音がする。
何かを警告するような音。
モノクマの中から聞こえてくるようだった。

「なんだこりゃ……アラーム……?」
「……!」
「そのモノクマを投げるのよ! 今すぐ!」

銀髪の女性が善吉に向かって叫ぶ。
めだかは思った以上にダメージがあり、未だに呻いていた。

(馬鹿な……回復が追いつかないだと……! これが力の封印だというのか……!?)

そして、それについて困惑があったのは、黒神めだか本人だった。
十三組――異常と呼ばれるほどの特異な能力を持つ彼女であったが、それを封じられているのは大きな痛手だった。
能力が著しく低下しているのに、その危険性すら孕む彼女の性質は変わらないということなのだから。

「は? なんでだよ……コイツは……!」
「いいから投げなさい!」
「投げなくてもいいからそいつから離れろ! そいつにはおそらく、爆――」

――ボン。
モノクマが勢いよく爆発四散した。
銀髪の女性の言葉も、黒神めだかの言葉も虚しく、人吉善吉はその爆発に巻き込まれた。

「善吉!」

体が焼け焦げ、血液をぶちまけている善吉の前にめだかが駆け寄る。その表情は彼女が普通は、異常な時も見せないような、そんな表情に変わっていた。

「め……ん、……ま……」
「善吉……善吉いいいいいいい!」

めだかの虚しい叫びが会場に響いた。
参加者はその現実に言葉もなく、ただ黙っていた。その中には興味がなさそうにしている者もいたのだが。

「もう邪魔はしないでよね。いくらボクがいっぱいいるとしてももったいないしさ」

壇上の床からもう一人、新しいモノクマが現れた。どうやらこのモノクマというのは、一人だけではないようだ。
つまり、善吉の死は犬死にでしかなかったということだ。

「貴様ああああああ!」

この事実にめだかの怒りが頂点に達する。
髪が真紅色に変わり、勢いよくモノクマに飛びかかる――
しかし、その拳がモノクマに届くことはなかった。

「めんどくさいからもう始めちゃうよ。殺し合いスタート!」

めだかがモノクマに拳を入れる前にモノクマは素早くスイッチを押した。
すると、そこにいた参加者は全員姿を消した。いや、約二人の参加者だったもの以外は。

「さて、ボクはモニターでオマエラの様子でも見ることにしようかな。
 いったいオマエラは、いつわずかな希望の中で絶望するんだろうね……楽しみ楽しみ。うぷぷぷぷ……」

モノクマの不気味な笑いが会場に響いていた。


【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】
【人吉善吉@めだかボックス 死亡】

【0:00 バトルロワイアル開始】

【2人死亡 残り60人】



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最終更新:2015年04月20日 08:11