全長 | 250~300cm |
重量 | 2.5~3.0kg |
地域 | ヨーロッパ |
年代 | 13~18世紀 |
ビルは農耕具から発展した長柄武器のひとつであり、中世期において最も多くその名が登場する武器でもある。
イギリスでは「武器を取って立ち上がれ!」と同意儀の言葉で「弓と矛(Bows and Bills)」と言い回していたと言う。
当初はイタリアでの別称で「ロンカ」や「ロンコーネ」と呼ばれていたとも言われている。
13世紀初期のものはシンプルなタイプのもので、上記CGのような形状のものである。
シンプルでありながら、鎌のような穂先と突起がついた多機能な長柄武器だが、用途的に扱いやすい優秀な武器でもある。
1 | 穂先:スピアーヘッド(SpearHeads) |
2 | 錨爪or鉤爪:フルーク(Fluke) |
3 | 刺端:ピーン(Peen) |
4 | 斧刃:アックス・ブレード(Ax Blade) |
5 | 口金:ソケット(Socket) |
6 | 柄:ポール(Pole) |
13~16世紀中頃まではよく使われた武器だったが、銃器の発展とともに第一線では見られなくなった。
その為、徐々に使われなくなるが、実際は他の長柄武器の影響を受けてその形状を徐々に変化させていった。
変化の末のビルについては、「ビル 後期型」を見ていただくようお願いしたい。
一説にはビルの影響を受けてハルバードが生まれたと言われているが、色んな文献から情報を照合していくとそうでもないことが分かる。
上記の前期型のCGのモデルになっているのは、15世紀にスイスで使われていたビル。
ハルバードの原型ともいえる「ゼンパハ式ハルバード」は14世紀に登場している。
これは上記のビルと比較して似ても似つかない形状をしているため、ビルから影響を受けて発展したものとは考えづらい。
また、調べていって分かったことなのだが、「ギサルメ」=「ビル」であるという説もあるようなのである。
ギサルメもほぼ鎌のような形状のものと、複合長柄武器の形状のものと2つある(当サイトで紹介しているのは後者の形状)
この後者のギサルメ、正式な名称が「ビル・ギサルメ」と言うそうで、ビルとギサルメの両方の特徴を併せ持っている長柄武器なのである。
ビルは長い歴史の中、進化し、別の姿へと変えていった代表的な武器と言えるだろう。
鎌部分で斬ったり薙いだりするだけでなく、引っ掛けて引きずり落とすことも可能。
また、突起で突き刺したり引き倒すと、攻撃方法は多岐に渡る。
多くの機能を持っているものの、基本的に引きずりおろして叩き切ったり突き刺すものなので、用途は思いのほか簡単である。
そのせいか、軍隊よりも市民や農民に多く使われたとされている。
2009年 5月11日更新
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